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ヒッチコックのサスペンス技法

レポートの下書きです。ァ '`,、'`,、('∀`) '`,、'`,、

気にしないでください。( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \

ちょっと全部書き直そうかなとも思ってるので、
せっかく書いたし、もったいないということで
アップさせていただきます(∀`*ゞ)エヘヘ




 サスペンスの巨匠、アルフレッド・ヒッチコック。彼は、定型の撮影方法にとらわれない斬新なアイディアを豊富に用いて、様々な名作を完成させた。役者の演技力やセリフには決して頼らず、それらを小道具のように用いて、純粋に映画的手法のみで登場人物の気持ちや感情を伝えようとした。それは、まさに有名なモンタージュ理論、クレショフ効果を映画で表現してみせていると言える。例え役者の表情が同じでも、次に繋ぐショットの違いのみで、登場人物の感情は異なって見える。

 ヒッチコックは、観客の感情の高ぶりを持続させることを大切にしている。観客を登場人物に感情移入させるため、例えば主人公が走る列車に乗っている場面では、決してカメラは外から列車を映さない。カメラは常に、主人公と共に列車の中にいるのである。その代表例が、『救命艇』と『裏窓』だ。『救命艇』でカメラは、登場人物たちの乗る脱出ボートを、俯瞰視点や遠景で捉えることはない。『裏窓』では、すべて、脚を怪我して歩けない主人公の視点から物事を捉えている。他にも、登場人物が憤ったり怯えたりして感情の動きが高まっている時には、決して突然にアップからロングショットへと切り替えたりはしない。急に立ち上がるような場面でも、アップのままティルトなどで追いかける。説明的な映像よりも、描写を大事にしているのである。

 そんなヒッチコックが映画作りにおいて大切だと考えているのは、「サプライズ」ではなく、「サスペンス」だという。その違いは、予め観客に情報を与えているか否かというところにある。ヒッチコック自身が用いた例を挙げれば、二人の男が座って話していると、突如としてテーブルの下の爆弾が爆発する。これが「サプライズ」であるが、テーブルの下に爆弾があるぞということを予め観客が知らされていれば、何気ない男達の会話の間にも「サスペンス」が生まれることとなる。

 分かりやすい例が、『めまい』や『知りすぎていた男』、『第三逃亡者』などの映画である。『めまい』には謎の女性が登場するのだが、その正体は実に驚くべきものである。原作小説では、この女性の正体は最後の最後に明かされるのだが、ヒッチコックは最初から観客に、その正体を教えてしまう。まさに「サプライズ」を「サスペンス」に変えたわけだ。普通の監督なら、原作通り、衝撃の結末として、その正体は最後までとっておくだろう。だがそうしてしまうと、この映画は途中から最後までが退屈なものになってしまうとヒッチコックは言う。正体を先に知らされるからこそ、主人公は気づけるのか、正体が判明した時どうなるのか、と食いついていくことになるのである。

 『第三逃亡者』では、殺人事件の真犯人を捜している娘が、犯人はあるホテルにいて、眼を病的に瞬く癖のある男だと知り、目撃者である浮浪者を連れてホテルのパーティーへと出向く。「こんな人ごみの中から眼を瞬かせる男を見つけようなんて馬鹿げてやせんかね」と浮浪者が娘に言うと、カメラは途端に天井からの視点となる。

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 パーティー会場を移動していくカメラ。


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 やがてカメラは、楽師達の間を縫って、一番奥のドラマーをクローズ・アップしていく。


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 遂にドラマーの眼をアップで映し出すカメラ。そして、男の目が病的に瞬く……。

 真犯人の居場所を知ってしまった観客は、ここからどうなるのか、どうやって娘は犯人を見つけ出すのかが気になって仕方がなくなるというわけである。


 このようにヒッチコックは、普通ならやらない演出によって、サスペンスをこれでもかと高めてくれる。ここで、『鳥』のワンシーンを取り上げてみる。
 鳥の群れが学校に現れ、教師が子供を先導して逃げるシーンである。ここで、普通なら逃げる子供と狙う鳥とを、短いカットで交互に見せていくことでサスペンスを盛り上げるのだが、ヒッチコックは、延々と鳥の様子だけをカットせずに撮り続けた。やがて子供達の走り出す足音が聞こえ、その途端、鳥達が一斉に飛び上がる。

 その少し前、女性が鳥の群れに気づくシーンでも、同じような手法が使われている。

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 学校の外で、女性の座るベンチの後ろにあるジャングルジム。数羽の鳥がとまっており、少しずつ上空から鳥が降りてきて、数が増えていく。


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 その後、カメラは延々と煙草を吸う女性を捉え続ける。鳥は少しも映らない。


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 やがて女性の視界に、一羽の鳥が映る。


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 鳥を目で追う女性。鳥は滑空し、やがてジャングルジムへと行き着く。


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 いつしか大量に佇んでいる鳥達。ここでも無駄なカット・バックは使われていない。シンプルで、静かなシーンであるが、サスペンス効果は大きい。最近の派手な映像だけが売りの、演出がおろそかな映画とは明らかに異なっている。


 観客に先に情報を与えておくことは、映画への感情移入と相反するように思えるが、実はそういうわけでもない。ヒッチコックの例であるテーブルの下の爆弾も、その存在を知っているのは、その場で観客のみである。だがもし知らされていなければ、どんなに魅力的な会話を登場人物がしていようと、映画への感情の高ぶりは削がれてしまう。知っているからこそ、何してるんだ馬鹿、と映画に没入してしまうことになる。

 ショットの積み重ねによるサスペンスの盛り上げ。最近の映画では、高まる音楽や激しいカメラの動きなどによって、それを表現しがちである。そういったものは、見ていて度胆を抜かれることはあっても、心底ハラハラドキドキするという高ぶりは味わえない。

 ヒッチコックの作品を筆頭に昔の映画で培われた、純粋な映画的手法、演出の技術を、ここでもう一度見直す必要があるのではないだろうか。



<参考文献>
フランソワ・トリュフォー(1990).『ヒッチコック映画術』.晶文社


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テーマ : 洋画 - ジャンル : 映画

コメント

No title

お疲れ!ちょっとヒッチコックの映画を見たくなったよ。
個人的には北野武もそんな映画を撮っている気がする。
ところで、フランソワ・トリュフォーもステキな映画を撮るよねv-353

No title

最初、誰かと思ったわ!!笑
ヒッチコックはいいよ~。巨匠よ。
トリュフォーみたいな洋画は見るんや?

No title

ヒッチコックの技法は本当に凄いですよね。
「めまい」の螺旋階段のシーンなんて、
良くもまああんなことを考え付くもんだと思いますよ。

No title

あ、あの画面がグーってなるシーンですね。
あの撮影技法は今では『ジョーズ』や『イベントホライゾン』や『ロード・オブ・ザ・リング』なんかでも見かけますが、
最初に思いついたりするのは凄いですよね。
本当にこちらも眩暈を感じてしまいますから、見事ですよね。

No title

ちょろっと遊びにお邪魔して偶然拝読し、勉強になりました。まさに巨匠の名にふさわしい人ですね。
以前NHKBSで日曜の真夜中に放送されていた『ヒッチコック劇場』を、よせばいいのに独りきりで恐る恐る観ていました(でもやはりああいうドラマは真夜中でなくてはなりませんね!)。一話辺りが30分足らずのショートストーリーでしたが、どんだけ戦慄させるんだよというくらい恐ろしい思いをしたものです。それでも次週もまたしっかり観てしまう、いわゆる「怖いもの見たさのパターンのやつや!byチャンカワイ」な自分でした(笑)

観客だけが知っているっていうのは確かにサスペンスですねぇ。(ヤバいよ、あんたヤバいんだって!!)と、何度画面に問いかけたことでしょう…( ̄∀ ̄)ギリギリまで高められた緊迫感が緊張に耐えられなくなる頃に迎える急転直下の意外な展開、あの絶妙なバランスって本当に凄いと思います。それは脚本だけでなく、カメラワークに負うところも大きかったのですね、納得です。
ストーリーの一つひとつは今も強く印象に残っています。鬼才・奇才・天才、様々な形容で讃えたい監督ですね。


♪ちゃっちゃちゃらら ちゃっちゃちゃ~

↑無邪気な感じを装ったこのテーマ曲、めちゃ怖かったです。同劇場によく出てくる典型的悪役(?)表現技法のひとつ、「笑顔の下に狂気を隠している人物」にも似て。
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