ロバート・A・ハインライン 『輪廻の蛇』
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面白い話を読みました。
かつて女性から性転換した男が主人公です。
まず、その過去が語られます。
1945年。
主人公は、生まれてすぐ孤児院前に捨てられ、そこで育った。
そして1960年。
15歳の少女の時、ある男に暴行され、子供を産んだ。
けれども、その赤ん坊は誘拐され、行方不明に。
主人公は潜在的に両性具有者だったために性転換し、
1970年。今に至る。
主人公は自分を暴行した男を捕まえるため、
航時局員と共にタイムトラベルして1960年の過去に。
まあ、ここまでくれば、たいていの人は分かると思うのですが、
そこで主人公は、成り行きで、孤児院育ちの少女を……
とまあ、これが、この小説のオチだろう、
ゆるい話だな、と思っていたのですが。
その後、主人公と別行動していた局員は、
ある病院から一人の赤ん坊を誘拐し、
1945年に向かうと、とある孤児院の前に置き去りにする。
父と母と子が、すべて自分自身というこの構図……!!
何それ!
その上、実は局員もまた、歳を経た主人公で、
自分自身を成り立たせるために、子を誘拐したのだと分かる。
男である自分が少女である自分を襲い父となり、
少女である自分が男である自分に襲われ母となり、
赤ん坊である自分を産む。
局員である自分が赤ん坊である自分を誘拐して過去に連れ去る。
自ら閉じることで成立する、自己完結的な輪廻の輪。
タイムパラドックス・テーマの究極と言われる作品だそうで。
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